酒

　夜中だった。
　食事をして、もう少し、仕事しようと思い、再び病院に戻った。

　丁度11時をまわった頃だった。

　玄関からエレベーターに乗り、いざ自分の部屋に入ろうと鍵を差し込もうとしたとき、PHSが鳴った。

　「先生、患者さんがお酒飲んで酔っぱらってます！」
　「・・・は？」

　病棟看護師からだった。
　急いで着替えて、病棟に急ぐ。
　病室は、酒臭い。
　患者はベットで気持ち良さそうに熟睡していた。

　「◯◯さん、寝てるとこごめんなさい」
　「・・は？だれだおまえ？」
　「◯◯さん、手術した先生ですよ！」
　「・・しらねぇ」
　「お酒飲んだんですか？」
　「うん、飲んだ」
　「寝酒？」
　「そう」

　・・だめだこりゃ。

　看護師によると、見回りのときに、部屋の真ん中でズボン脱いで立っていたのを発見したらしい。床頭台の陰から、ニッカウヰスキーの瓶が見つかった。カラだった。720ml。

　病棟医長に連絡。
　飲酒は強制退院だ。でも夜中。
　・・朝になって、シラを切られても困る。

　家族に連絡。
　「かくかくしかじかで、お酒飲んじゃったみたいです。飲酒されると、退院にせざるを得ないんです・・」

　奥様は恐縮してばかりだった。

　・・３０分後、家族が迎えに。
　患者は、ベットの上にあぐらをかいて座っていた。
　家族がいる前で、退院になることを話す。

　「お酒飲むと退院になるんですよ・・」
　「・・・病院では、お酒飲んだらいけないのか？？・・そういうことは、早く言ってくれないとわからないだろう！！！！」

　・・やっぱり怒った。息子がなだめる。家族呼んでから伝えて正解だった。
　奥さんと息子は平身低頭だったが、患者は
　「いくぞ！」
　と言って去っていった。

　時計は1時を回っていた。

　あとでアナムネ見てみたら、「飲酒：焼酎1日400ml」だった。

※んー、ちなみに入院案内に「酒はダメ」と書いてあります。